Floating in Europe

ヨーロッパで言語学を学んでいる学生の日々です

無意識の言葉の中に

こんにちは。2ブロックが始まって1週間、コロナ感染者が急激に増えて不穏な雰囲気が漂っていますが、私はまだとりあえず全ての授業を対面で受けています。いつオンラインになってもおかしくない雰囲気にビクビクしています。今日は今週1週間の授業を受けてみて感じたことをシェアしたいと思います。

 

言語史

今期の言語学の選択授業が言語史なのですが、前ブロックの言語教育の授業が面白かったのもあり、前ブロックとの差を感じています。講義の内容というかどちらかというと教授の話し方が面白くなくて、というのが正直な感想です苦笑。多分教授が全体の学科のシステムを知らないせいで、前までのブロックで扱ったことを延々と話していたり、講義があっちこっち脱線したり、どうも講義やコース自体が整っていない印象を受けます。さらに火曜日の講義の後突然アサイメントを受け取り、次の日の夕方までに500字のエッセイを書いてくださいと言われ、学生の不満が爆発しました。私個人としては、1日で調べて提出するにはクオリティを下げるしか方法がなく、全然納得のいかないものを提出しました。学生たちが口を揃えて前のブロックの教授本当に良かったよねと裏で話しているくらいです笑。残酷な話ですが、色々の教授の授業を受ける機会が多いぶん教授を比べてしまうことが多々あります。この授業はの評価はテストではなくエッセイで決まるので、テーマを探して始めているのですが、なんせ授業に興味が湧かないので、エッセイのテーマも決まらなくて困っています。こんなにエッセイのアイディアが全く思い浮かばないのは初めてです笑笑。本当に思い浮かばなければ、地名が現代の言語にどのように繋がっているか、みたいなことを書こうかなと思っています。地元が北海道なので、昔からアイヌ語が語源の地名に慣れ親しんできたので、こういった地名が言語史の研究どのように使われるのかは興味があります。

 

無意識の表現

さてもう一つの政治学の授業ではEmancipation and Identity politicsという授業を取っています。これは週に2回セミナーがあるのですが、この授業は今のところとても面白いです。どのように人のアイデンティティが作られ、それが政治の世界においてどのように使われているのかということを勉強しています。例えばフェミニストの運動の中では女性というアイデンティティが形成されますが、極端なケースでは女性でないとこの経験は理解できないと他の人を除外することがあったり。かと思えば極右政党の中には白人男性が自分たちの場所を奪われていると、移民や女性に対して差別的な政策を取ろうとしたり、アイデンティティと政治は切り離せないものです。

そもそもアイデンティティは他人との対比の中でできていることが多いので、例えば感情的な女性と定義することで理論的な男性というアイデンティティを作ることができます。東京オリンピックパラリンピック組織委員会の会長であった森さんの(わきまえていない)女性が会議にいると会議が長くなるというのはこれの良い例だと思います。このように女性を定義することで、自分(男性)は効率的で理論的な会議ができると位置付けることができます。

この例からも見える通り、このようなアイデンティティの形成や差別は言葉に現れます。たとえそれが無意識の発言だったとしてもです。私たちはこのような表現に気づくこともあれば気が付かない時もあります。このような差別をなくすにはこのような表現にまず気がつく必要があると思います。ちょっとした「違和感」感じたことありませんか?

私は先日の入国制限緩和の批判コメントに違和感を感じました。入国制限緩和の是非はもちろん議論されるべき問題だと思います。ただ、発言の中にはよく「外国人が日本にウイルスを持ち込む」や、「日本人を外国人から守る」などの表現が見受けます。日本に住んでいる人は皆日本人ですか?そもそも日本人って誰が含まれるのですか?日本に戻る日本人の帰国者は危なくないけど外国人は危ないのか?ニュースでの日本人、外国人の区別はありきたりな表現ですがこの表現の上に私たちの日本人というアイデンティティは成り立っています。私たち「日本人」はこの表現を聞くと、自動的に自分は日本人だというアイデンティティを受け取り、そのアイデンティティに自分自身を当てはめます。日本は単一民族国家だという前提の上にこの表現は成り立っています。この表現が差別を助長しているようで、この表現が文化や人種のヒエラルヒーを生み出しているようで、私は居心地の悪さを感じました。

きっとこのような表現は日本に限らず世界中に溢れかえっていると思います。アイデンティティの形成は自我の形成のためにも必要不可欠です。ただそれが何を引き起こすのか、社会的に、政治的に何を意味するのか、考えれば考えるほど複雑な問題です。ダラダラと日本の例を出しましたが、授業ではこのようなテーマをヨーロッパでの問題と絡めてディスカッションしています。自分の発言や考え方の甘さに気がつかされる事が多くとても面白いです。

 

 

 

毎回毎回思いますが、新しいブロックの1週目は慣れないことばかりでとても疲れます。ありがたいことに毎週金曜日は講義やセミナーがないので明日はゆっくりリーディングやらアサイメントを片付けたいと思います。ではまた!